抱える在庫で資金調達!在庫の売却による資金調達とは?

経営における資金調達というと、多くの場合は銀行や公的機関からの資金融資を思い浮かべるのではないでしょうか。確かに一番身近な方法ですが、資金調達には別の方法もあります。例えば、在庫を活かして資金調達する方法です。事業を行う中で日々の管理コストに繋がりやすく悩みのタネになることが多い在庫をうまく活用すれば、資金調達の方法として役立てることができます。そんな在庫売却による事業調達の概要や特徴、注意点を確認していきましょう。

在庫の売却とは?

融資を受ける際に提供する担保の代表例として不動産があります。ですが、中には担保に提供できる不動産を有していない人もいるでしょう。
そうした人は当座の資金繰りのために融資を受けたいのに、担保を持っていないので融資が受けられず、いわゆる黒字倒産に陥ってしまうという事態に繋がりかねません。そして、こうした事態が市場に不安定要素をもたらしている、という指摘も存在します。そうした状況を改善するため、在庫や売掛債権を担保に提供することで融資を受けることができるようになりました。

この仕組みがABL(Asset Based Lending)と呼ばれる制度です。具体的な流れとしては、動産譲渡登記を在庫といった動産に対して行います。そして、在庫が顧客に売れた場合には動産担保から外れ、売れ残ったものが担保として残るのです。在庫はその時々によって数量や価値が変動するため、事業主は定期的に金融機関に対して在庫に関する報告を行います。それに対して金融機関は改めて在庫に関して評価を行い、在庫の増減や価値の変動に応じて担保価値の評価替えを行うのです。金融機関としても担保価値の毀損は避けたいので、必要に応じてコンサルティングや在庫の取引制限などを行い、事業が拡大するように協働していきます。金融機関は資金回収をする際、売れ残った在庫の売却を行うことで資金回収を図ります。したがって、担保に提供したからといってその在庫が販売できなくなるわけではありません。営業活動を継続しつつ資金調達をすることができるのです。(※1)(※2)

在庫売却による資金調達のメリット・デメリットとは?

在庫の売却による資金調達を行うメリットとしては4点あります。
1点目は、事業継続がしやすい融資方法という点です。在庫が担保になったからといっても販売に制限が加わるわけではないため、営業活動に支障は出ません。在庫が顧客に販売できた場合、売れた分は動産担保から抜けます。そして、残った在庫がそのまま担保となるのです。
売上が上がれば事業主にとっては喜ばしいことですし、売れた分再度商品を入荷し、在庫を拡大することに繋がります。売上が高まることは、さらなる事業拡大や設備投資に繋がっていくでしょう。したがって、従来と同じように営業活動は継続しながらも資金調達ができるのがメリットといえます。

2点目は、在庫が増えれば増えるだけ融資枠が広がる点です。在庫が増えることは多くの場合、管理コストの増大を意味するため事業主にとっては課題となるのですが、在庫売却による資金調達を考える場合には逆の効果が生まれます。つまり、在庫が増えることは金融機関からすると担保が増えることになるため、融資枠が増えるのです。
そうなると経営側としては事業拡大のために資金が使いやすくなります。一方、金融機関としても融資枠が増えることによって金利収入の増大が期待できるでしょう。

3点目は、金融機関との長期的な関係を持つことができる点です。通常の融資であれば金融機関が融資を実行した後は返済計画に沿って返済を進めていきます。しかし、在庫の売却による資金調達の場合、金融機関は融資を実行した後、定期的に事業主から受けるレポートに対してコンサルティングサービスを提供します。
金融機関としては融資の回収が重要なので、在庫が顧客に売却されて収益が増大するように協力してくれます。もし在庫管理などに問題が見つかった場合には販売に制限をかけるといった措置もあり得ますが、それも事業拡大のために行われるものです。将来的な資金調達を考えても、金融機関との長期的な接点を持っていると会社にとって有利に働きます。
そうした関係を保ちつつコンサルティングを受けることができるのも事業主にとってはメリットといえます。

4点目は、仕入れ価格の高騰にも対応できる点です。世界経済の状況によって仕入れ価格が高騰することはしばしば起こります。通常、仕入れ価格の高騰は商品価格の値上げにつながってしまうため事業収益を圧迫し、事業主にとっては苦境となりやすいでしょう。しかし、在庫の売却による資金調達の場合には仕入れ価格の高騰がメリットに繋がるのです。
仕入れ価格が高騰しているということはそれだけ在庫の価値が高まっていることになります。在庫の価値が高まるということはそれだけ担保価値が高まるということなので、融資可能枠がその分高まります。したがって、在庫が増えた時と同様、事業主と金融機関それぞれにとってメリットが大きくなるのです。

一方、デメリットには3点挙げられます。1点目は、在庫があまり売れなかった時にはいわゆる叩き売りをしなければならないことがある点です。在庫が期待以上に販売できなかった場合は損失が出る可能性があります。ですが、無駄な在庫を抱え続けて管理コストを負担し続けることと比べると、損切りとしての効果が期待できるかもしれません。
2点目としては、定期的な報告義務が課せられることです。コンサルティングを受けるには定期的な報告を金融機関に提出することが欠かせません。定期的な報告義務は企業にとって事務的な負担が大きいでしょう。銀行から回答を求められた時にスムーズに回答するためには社内体制の整備も要求されます。したがって、定期的なモニタリングを受けられるメリットと同時に事務的な負担はぐっと高まる可能性が高いでしょう。
3点目は、手数料負担です。在庫を担保にするためには登記をする必要があり、それには手数料がかかります。また、在庫を担保とするための事務手数料や担保の管理、モニタリングに関する管理手数料も必要です。そして、在庫の評価を外部の専門家に委託しなければならなくなると、専門家の調査手数料も必要になってきます。こうした手数料を鑑みると、内容によっては通常の融資よりも負担が大きくなるかもしれません。(※1)(※3)

申込の流れは?

実際に在庫の売却による資金調達をするには、まず扱いのある金融機関を探します。金融機関は事業主から提供を受ける在庫の評価をして、融資可能額を決めるのです。そして、融資可能額の範囲内で融資が実行されます。通常の融資であればそこから返済をしていくだけですが、融資が実行されて終わりではないのが在庫の売却による資金調達の特徴です。
具体的には、融資を受けた事業主は金融機関に対して定期的に担保物件の状況を報告します。金融機関はその報告に基づいて経営状況や動産の状況を把握し、必要に応じてコンサルティングを実施していくのです。

在庫は不動産と異なり、季節や販売状況などさまざまな要因によって価値が変動します。したがって、金融機関はその価値を継続的にモニタリングする必要があるのです。事業が継続して継続的に利息収入や返済を受けられるのが金融機関にとっては重要になります。したがって、もし事業活動に問題があるとみなされる場合には担保としていた在庫の販売や処分に一定の制限を加えることで事業の監視を強化する可能性もあるのです。また、モニタリングの結果、動産の価値が下がってしまった場合には融資可能額が調整される可能性があります。

どんな審査があるのか?

在庫の売却によって資金調達をする場合、まずは担保となる在庫について審査が入ります。具体的には、在庫の保管状況や品目別の数量、そして金額が審査対象です。なお、審査を行うのは金融機関ではなく特定非営利活動法人日本動産鑑定になります。審査には時間を要することが多いのですが、取扱金融機関との関係が深い場合は普段から在庫の推移などがチェックされているため評価が出やすくなるでしょう。
そのため、スムーズに審査を進めるには普段から金融機関に対して在庫を含めた状況の説明をしておくといいかもしれません。書類上の審査の後は実際に在庫の保管状況を確認するため実地調査が入ります。店舗や倉庫といった在庫を保管している場所の写真を撮影し、記録するのです。申込時の審査は以上ですが、融資実行後には最低でも年に1度在庫表を提出して定期的なモニタリングを受けるようになります。(※4)

在庫売却に必要な書類とは?

まずは、申込書が必要になります。他には、一般的な書類として会社案内や決算書、試算表、組織図、施設一覧といった会社に関する情報の提供も必要です。そして、担保を表すものとして在庫の明細や保管場所一覧表、仕入れ契約書といった在庫の詳細や保管場所を証明する書類を準備しましょう。(※5)

在庫売却による資金調達に必要なコストとは?

在庫の売却による資金調達をしようとした場合、まず、動産を担保とするための手続きに要する費用が挙げられます。登記手続きの手数料です。それ以外には、金融機関が定期的に担保の管理やモニタリングをするため、それらの業務に関する管理手数料も必要になります。また、担保となる資産の評価が難しく外部の専門家に依頼しなければならなくなると、その調査手数料も負担しなければなりません。したがって、一般的な融資を利用するよりはさまざまな手数料が生じる場合があります。ただし、その手数料の分金融機関との付き合いを長く保つことができるため、長期的に金融機関と付き合いたいと考える場合には必要経費として考えることができるかもしれません。

在庫売却による資金調達をする際の注意点とは

在庫を担保にして融資を受けるため、その在庫についていくつか注意すべき点があります。まず、対象となる動産の評価が可能であることです。担保として設定するには、きちんと担保としての価値が評価できなければなりません。いくら在庫があるといっても評価が難しいものである場合は資金調達の方法として利用できない可能性があるため、確認しておきましょう。

次に、一定水準以上の換金価値があることも求められます。評価はできたとしても評価価値が低ければ、いくら担保に提供したとしても十分な融資を受けることは難しいでしょう。事業拡大を目的とした資金調達であれば少しでも多くの資金を調達する必要があります。したがって、換金したときに一定水準以上の価値があることが必要です。

また、在庫が市場や相対取引によって処分可能かどうかも重要です。市場で売買できれば換金しやすく流動性の高い資産と判断されますが、流通性に乏しい場合には担保としての価値が評価されにくくなります。そのため、担保として提供する在庫はある程度流動性の高さが必要となるでしょう。在庫について定期的にモニタリングが入ること、および金融機関へ定期的にレポートする必要があることを考えると、在庫の管理が容易にできることも大切です。金融機関への報告は定期的に必要であり、時には金融機関から急に回答を求められることがあるでしょう。

そういった時に回答ができなかったりすると管理能力が疑問視されて継続的な取引に支障が出るかもしれません。また、在庫管理の事務コストがかかってしまうと経営に悪影響を及ぼすでしょう。そうした事態を避けるため、社会の管理体制を構築することはもちろん、在庫も管理がしやすいものであることが望ましいです。

当然、在庫に不良品がないことも求められます。不良品が混ざっていると担保としての価値が暴落するか、担保価値がつかなくなるでしょう。そうなると融資を受けたくても受けられない、ということになりかねません。不良品のある在庫を抱えるのは融資を受ける時だけでなく、普段のビジネスにおいてもメリットはないでしょう。在庫の売却による資金調達を検討し始めたことを機に、抱えている在庫にそういった不具合がないかを今一度確認してみるといいかもしれません。(※6)

事業主、金融機関双方にとってメリットの大きい資金調達方法!

担保として提供できる不動産を有していない事業主にとって、資金繰りに必要な融資を受けられないのは大きなリスクでした。しかし、制度が変わり、在庫を担保として提供することで融資ができるようになったため、金融機関はこれまで融資できなかった中小企業への融資を実行できるようになりました。その融資も従来のように一度融資したら終わりではなく、定期的なモニタリングを通じて長期的に事業に携わることができる形に変わったのです。

そして、プロとして経理や財務に関する助言ができるため事業拡大に寄与でき、事業拡大に貢献すれば金融機関は利子収入の増大が期待できるようになります。また、融資をした会社が関連企業との取引を活性化することが期待できるため、融資先の拡大といった効果も見込めるでしょう。

一方、事業主にとっては抱えている在庫を担保にすることで融資を受けることができるようになり、黒字倒産のリスクを回避できるようになりました。そのため、経営は順調だが当座の資金繰りに苦しんで黒字倒産してしまうという可能性は軽減したといえるでしょう。そして、管理コストがかかるために経営課題になりやすかった在庫が資金調達に大きく貢献してくれるようになったのも大きな変化です。

事業主、金融機関双方にとってメリットが大きいのがABLといえるでしょう。ただし、在庫管理の事務コストが必要だったり、在庫の種類によってはABLを利用できない可能性がある点には要注意です。もしもABLを利用できる状況であれば、抱えている在庫を資金化することで事業成長に役立てることができます。売却できそうな在庫を抱えている事業主は一度ABLを検討してみるといいでしょう。

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