資金調達手法の1つ「手形の売却」とはいったい何か?

会社を存続させるためにはお金が必要です。もし、使えるお金が無くなってしまえば当然会社はなくなってしまいます。したがって、企業がお金を準備するための手段を多く知っておくことは、会社を続けるためにも大切だと言えるでしょう。そこで知っておきたいのが、手形を使った資金調達の方法の1つである「手形の売却」です。ここでは、メリットやデメリット、利用する前の注意点など、手形の売却について詳しく解説していきます。

手形の売却とは

手形の売却とは「手形割引」とも言われ、金融機関もしくは手形割引業者に手形を買い取ってもらうことで現金化する手法です。この手形とは、商品の販売やサービスの提供をした際に現金の代わりに支払われる有価証券です。現金とは違うものの、一定の金額価値があるため、商取引の場で使われることが多いです。手形は、支払期日に業者や金融機関に持ち込めば現金化することができます。
ですが、急にお金が必要になり、支払期日前に現金を準備しなくてはいけない場面に遭遇することも多々あります。そんな時に支払い期日前に手形の売却をすることで現金を用意することが可能です。ただし、支払い期日までの金利分が割引料として差し引かれるため、本来手にするはずだった金額よりも減額されることになるので注意が必要です。したがって、金額が減っても良いからとにかく今すぐ現金が欲しいという時の手段になります。(※1)

手形の売却のメリットとデメリット

手形の売却のメリットには、すぐに現金化することができるという点が挙げられます。取り引きする業者によっては、その日に現金化することができるため、早急に現金を準備したい時には有効な手法と言えます。一方、手形の売却のデメリットは、手形の取引先が銀行や業者に代金を支払う必要があるにもかかわらず不渡りの状態になった場合、手形の代金を依頼人がすべて支払う義務が発生するということです。
銀行や業者は利益を出すためにも手形の代金を回収する必要がありますから、依頼人に対して買戻し請求権を行使します。また、満期後の買戻し請求権を行使された場合、支払い遅延で生じた利息も支払いの対象になるので支払い金額が増加します。手形の売却は本来お金のない会社が利用する手法ですから、もしこのような状況になると資金繰りはさらに悪化する恐れがあります。(※2)

銀行で手形の売却の申し込みから現金化までの流れ

手形の売却を行う場所として挙げられるのが銀行です。そして、取引をする際に最初に行われるのが「持込人に対する審査」です。割引になった手形が不渡りになった場合、依頼人に買戻し義務が発生します。そのため、支払い能力があるかを調べるための与信審査が行われます。この与信審査は銀行で融資を受ける際の審査と同じで会社の業績や資産の状況で判断されるので、審査に通らなければ大企業から振り出された手形でも割引拒否をされることになるのです。
持込人に対する審査の後は、「手形振出人の審査」です。手形の支払期日までに代金を払うことができるどうかを調べます。審査は手形振出金融機関と信用調査会社からの情報をもとにして判断します。ただし、重点的に調べられるのは持込人に対する審査です。なぜなら、手形の売却はあくまで持ち込み人への融資だと考えられているためです。
銀行の信頼を得るためにも、自身の資産状況を見直す必要があるといえるでしょう。これらの審査が通れば、手形を現金化することが可能です。期間は3日~1週間程度かかりますので、計画的に行う必要があります。

銀行で手形の売却を銀行に依頼するには書類の準備も必須です。まず、用意するのは割引をする手形です。手形が有効なのかを判断するために必要ですので、準備するようにします。次に、会社の3期分の決算書と納税証明申告書、および代表者の収入を証明できる源泉徴収書。さらに、資産状況を把握できる預金通帳です。
これらは手形の不渡りがあった場合、依頼人が代金を支払うことになるので支払い能力があるかどうかをチェックするために欠かせません。また、登記簿謄本や不動産登記簿の原本といった会社に関する書類も信頼できる人物かどうか確認するために必要です。最後に、パスポートや運転免許証など依頼人が本人であることが証明できるものと印鑑証明も用意しましょう。(※3)

銀行で手形の売却を行うメリットとデメリット

銀行で手形の売却を行う場合のメリットは、金利が低いことです。手形の売却とは、本来もらえるはずだった金額から割引手数料などが引かれて支払われます。したがって、いくらすぐに現金がもらえるとはいえ、できる限りマイナスを少なくしたいのが本音です。銀行の金利は業者と比べて非常に安いです。手形の売却審査が通れば、少ない損失で手形の売却ができます。

ただし、デメリットもあります。それは、審査が厳しいというところです。審査は手形を売却する依頼人の身辺状況を中心に行われます。少しでも不審な点や問題点があれば、銀行は手形の売却に応じてくれません。また、審査から契約までにかかる時間がかかるのもデメリットです。銀行では手形取引約定書を交わすといった手続きをしなくてはなりませんから、どうしても期間が必要になります。手形の売却を銀行で検討するのであれば、時間がかかるという認識で申し込みをすることが大切です。(※4)

専門業者で手形の売却の申し込みから現金化までの流れ

銀行以外でも手形割引の専門業者を利用すれば、手形の売却は可能です。専門業者での手形の売却は銀行とは違い、手形振出人の情報を元に審査が行われることになります。手形の売却の流れとしては、業者に電話やインターネットを使って問い合わせをすることから始まります。次に、申込みです。直接業者の店舗に出向いて申し込むこともできますし、電話やFAX、インターネットからでも可能な業者もあります。
申込み完了後は与信審査です。業者によって違い、約1時間かかるところもあれば数十分で完了するところもあります。
審査が終われば、次は契約書の作成です。直接業者を訪問した場合はその場で手形と契約書の受け渡しを行い、インターネットや電話などで申し込みをした際は郵送で行われます。これらの手続きが完了すれば、振込もしくは直接現金で受け取るだけです。業者によって違うものの、申込をした当日に現金化できるところもあります。
書類の準備ももちろん必要です。ただし、銀行との取引とは準備する書類が違います。用意するものは手形の売却をする手形、依頼人が本人だということが分かるもの、そして会社に関する書類と会社の実印です。銀行で手形の売却を行う際は会社の決算書や資産状況を示す書類を用意しなくてはなりませんが、業者で行うときは準備する必要がないという特徴があります。(※3)

業者で手形の売却を行うメリットとデメリット

専門業者のメリットは、審査にかかる期間は非常に短いという点です。最短で当日に受け取ることも可能ですから、すぐに現金が欲しい会社経営者にはおすすめです。また、審査も通りやすいというメリットもあります。手形の売却を依頼した依頼人の状況よりも、手形の取引先の情報を優先して審査をするため、取引先が大企業であればあるほど手形の売却はスムーズです。
ただし、銀行と比べて金利が高いというデメリットがあります。金利が高いと手形を売却した時の損失が大きくなる可能性が高いため、受け取れる金額は少なくなる恐れがあります。手形の売却をするということはそれだけ緊急を要するという状況ですから、すぐに現金化したいはずです。しかし、金利がいくらになるのか調べるなど、できる限り損失を抑えるように慎重に行動することが大切です。(※2)

手形の売却でかかるコストについて

手形の売却にかかる費用には手形の期日に現金化する、もしくは資金取り立てをするためにかかる「手形取立料」と手形の金額よりも少額の資金を用立てるのに必要な「手形割引料」の2つがあります。まず、手形取立料は648円~1,080円の間でおさまります。ただし、銀行が提示する条件によって金額は変わってくるため、いくらになるのか調べておきましょう。
一方、手形割引料は「手数額面金額×手形割引利率×支払い期日までの日数÷365日」という計算式で求められます。例えば、手数額面金額が100万円、手形割引利率が10%、支払い期日までの日数が60日の場合、計算式に当てはめると100万円×0.1×60日÷365=1万7518円となります。そして、手形取立料が1,080円かかった場合、手数料は合計で1万8598円です。
したがって、100万円の手形を売却した場合にもらえる金額は、98万1402円となります。手形割引利率は銀行や業者によって異なります。銀行の場合、都市銀行で1.5%~3.0%、普通銀行は2.0%~3.5%、信用金庫で2.5%~4.5%、信用組合は3.5%~5.5%です。専門業者になると3%~20%と幅広くなっているため、利用する業者の選び方が大切になってきます。(※5)

専門業者を見極める方法とは?

手形の売却をすぐにしたいのであれば、専門業者に任せるのがベストな方法です。しかし、業者を利用する際は損をしないためにも信用できる業者かどうか見極める方法を知っておく必要があります。専門業者を選ぶ時に参考にするのがホームページです。「割安な割引率」や「審査が早い」のようにメリットを打ち出す業者も少なくありません。
しかし、その情報だけを鵜呑みにして利用するのはリスクが大きいでしょう。まず、知っておきたいのが割引率の低さを売りにしている業者の見極め方です。確かに、割引率が低ければそれだけ手元に残る金額は大きくなります。しかし、割引率は安くても、調査料や保証料などを別途で支払わなければいけない業者もあるのです。また、業者は手形の取引相手の状況を審査して、手形を買い取るかを決定します。

もし、大手企業であれば信用度も高いため、どの業者も割引率は一定になります。ただし、取引先が大手企業のように信用度がない場合は、業者もリスクを考えて割引率を高めに設定します。そのため、見積もりで確認すると安くなかったということも少なくないのです。このような状況を回避するためには、複数の業者に見積もりを取ってもらうようにすることが必要です。見積りの中から自分にあった最適なプランを選択しましょう。(※6)
次に、審査のスピードについてです。手形の売却をするのであれば、1日でも早く現金化したいと考えるはず。ここで注目したいのが、業者が審査にかけるスピードです。銀行であれば数日かかることもありますが、一般的な手形割引業者は1時間前後で審査を完了します。したがって、この1時間前後が良い業者を選ぶポイントになるのです。もし、15分などあまりにも短時間で審査を終えた業者の場合は注意しましょう。
なぜなら、優良手形しか扱っておらず、自身が持っている手形を引き受けてくれるかどうか分からないためです。また、1時間以上かかる業者も問題ありです。手形割引業者は独自のノウハウを使って企業の信用度をチェックします。時間がかかるということは実績も少なく、ノウハウも確立されていない可能性があるでしょう。

そのため、割引率が高くなるなど、損失を被る恐れもあるのです。審査能力を判断するポイントは、全国に拠点を持っている業者を選ぶことにあります。全国に拠点のある業者であれば、そこで活動する企業の情報をすぐに手に入れることができます。特に、企業が密集している地域に拠点があればあらゆる情報が手に入りますから、手形の価値を迅速に判断してくれるはずです。審査をスムーズにするためにも、店舗の数にも注目してみましょう。(※7)

業者を利用する場合は直接会って決めよう!

専門業者に手形の売却を依頼する場合、インターネットや電話でも可能です。ですが、納得した形で利用したいのであれば直接業者の担当者に会って決めるのが良いでしょう。したがって、優良な業者の見極め方について知っておくことが大切です。まず、割引額を明確に提示してくれる担当者は優良業者の証拠です。
明確な割引率を提示できる業者はそれだけ調査能力があるという証明になります。逆に、他社の割引率を聞いてくる業者は調査能力がないため、信用するのは難しいです。次に説明能力です。手形の売却のような専門性の高い分野を一般の人が理解するためには、できる限り分かりやすく説明する必要があります。
もし、担当者の説明が分かりやすく理解できたのであれば、知識のある担当者として信頼できる人です。しかし、説明が難しく、手形の売却について理解できない説明をする担当者であれば、担当者自身も理解できていない可能性もあるため選ばない方が得策でしょう。また、知識があるということは審査の正確さにも繋がるため、しっかりと見ておきたいポイントです。

次に、選んではいけない業者について知っておくことも大切です。よくあるのが担当者がすぐに変わってしまう業者です。担当者がすぐに変わってしまうということはそれだけ利益を重視しており、依頼者のフォローは全く考えていないという業者といえるでしょう。担当者が変わることがないかチェックをしておくようにします。そして、最も気をつけたいのが現金の受け渡しが後日になる業者です。このような業者は資金繰りが良好ではない場合が多いため、悪質な場合、手形を持ち逃げして倒産することもあるので注意が必要です。(※8)

手形の売却は最終手段ということを忘れてはいけない

手形の売却のメリットは、短期間で現金が手に入るという点にあります。ですが、手形取立料や手形割引料を取られることになりますから、本来もらえるはずだった金額よりも必ず安くなります。したがって、手形の売却は会社にとって損失になるということを知っておきましょう。
手形の売却はあくまで最終手段ですから、使わないに越したことはありません。それでも現金が必要なのであれば、かかるコストを明確にして、できる限り損失を減らすよう努力しましょう。

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