担保がなくても資金調達できる!?無担保・無保証融資のしくみとは?

創業や中小企業の経営力強化を考えている人が活用できる資金調達手法の1つに、無担保・無保証融資という制度があります。融資を受ける際は担保や保証人を付けるのが基本ですが、この制度を利用すれば担保や保証人がなくても融資を受けられるのです。無担保・無保証融資は民間の金融機関ではあまり行われていません。公的な制度を利用して融資を受けることになるため、利用条件にも特徴があります。この記事では、無担保・無保証融資について制度のしくみやメリット、デメリット、利用方法などを説明していきます。

創業や中小企業の経営力強化に活用できる無担保・無保証融資

無担保・無保証融資とは、その名のとおり担保も保証人も必要としない融資のことです。一般的には、日本政策金融公庫が行っている新創業融資制度、中小企業経営力強化資金制度のことをいいます。この他、自治体が行っている融資制度や民間の金融機関の融資にも無担保・無保証のサービスがあります。
そもそも金融機関から融資を受けるには何らかの担保が必要です。担保とは金融機関が融資をする際に不動産や動産を債務者に提供させ、債務の返済ができなくなったときの弁済とするための資産です。金融機関は担保を提供してもらうことで、融資のリスクを抑えています。担保には不動産の抵当権や根抵当権、定期預金や株式などの有価証券が対象となる質権などがあります。
また、融資には保証人も必要です。保証人とは、債務者が返済不能になったときに代わりに借金を払う人のことをいいます。つまり、保証人の財産が担保となるということです。しかし、創業を目指している個人や中小企業では、担保として活用できる資産が少なく、融資を受けにくいことがあります。そのような個人や企業が融資を受けやすいように設けられた制度が無担保・無保証融資なのです。
この制度を利用すれば、担保や保証人を立てるのが難しい人でも融資を受けられる可能性があります。この制度を活用した融資実績は年々増え、特に2011年以降は女性や若い世代を中心に増加しているのが特徴です。日本政策金融公庫の性別、年齢別の創業融資実績によると、2014年の融資先数26,010先から、2016年には28,392先まで増えています。2014年から2016年の2年間で女性の利用者は1,294先、30歳未満の利用者が624先も増えているのです。それほど、女性や若い世代の利用者が多くなってきているのです。
背景にはインターネットを利用したクラウドソーシングや、個人事業主向けのサービス拡大があるといわれています。さらに、景気回復に伴い起業をするチャンスが増えたこと、キャリア形成の多様化も関係しているようです。日本政策金融公庫では、利用者数の増加に応じて相談窓口を設けたり、融資を利用できる対象者を増やしたりしています。
そのため、ますます利用しやすくなってきているのが現状です。(※1)ただし、無担保・無保証とはいえ、融資を受けるにはいくつかの条件があります。条件はその都度社会情勢に合わせて見直されているため、融資を受けたいと思う場合には確認が必要です。(※2)

申し込み前に確認!無担保・無保証融資のメリットとデメリット

無担保・無保証融資の大きなメリットは何といっても、担保や保証人が必要ないということです。そのため、資金調達が難しい個人事業主や中小企業が利用しやすいということが挙げられます。民間の金融機関では安全性を重視した融資を行なう傾向があるため、この制度ができるまで無担保や無保証ではなかなか融資が受けられなかったのです。
しかし、日本政策金融公庫の新創業融資制度や中小企業経営力強化資金制度による融資が拡大したおかげで、無担保・無保証でも融資が受けやすくなりました。さらに、成長性の見込める中小企業への融資を無担保・無保証で行う民間の金融機関も増えつつあります。無担保・無保証で融資を受けられるかどうかは、企業の将来性にかかっているのです。(※3)
もちろん、デメリットもあります。日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用した融資は、融資額が3,000万円以下では無担保・無保証ですが、3,000万円を超えると担保や保証人が必要になるのです。融資額が高くなれば、額に応じて担保や自己資金も必要になります。また、金利が高めに設定されていることもデメリットです。
中小企業経営力強化資金制度による融資では、認定支援機関から支援を受けながら融資を受けることになります。認定支援機関とは、中小企業や小規模事業者が経営相談を行うために設けられた国が指定する公的な支援機関です。税理士事務所や公認会計士などの専門家のほか、商工会や商工会議所などが含まれます。
この認定支援機関の支援に対する報酬は、融資を受ける企業の負担です。さらに、中小企業経営力強化資金制度による融資を受けるには事業計画書を提出する必要があります。この計画書は詳細に記載する必要があるため、作成に手間がかかるのです。他にも、半年ごとに認定支援機関へ、1年ごとに日本政策金融公庫へ経過報告をする必要があります。
また、繰り上げ返済が認められていないため、申し込み当初の予定通り返済しなければなりません。中小企業経営力強化資金においても無担保・無保証で融資が受けられる限度額が決まっています。2,000万円までが無担保・無保証で融資を受けられる限度額です。それ以上になると担保や保証人が必要になります。

無担保・無保証融資で資金調達するための手続きの流れ

日本政策金融公庫で新創業融資制度を利用するには、入金までに1カ月程度の手続き期間がかかります。まずは、どの支店が管轄となるのか確認が必要です。管轄となる支店がわかったら、一般的な流れとしては支店窓口で融資の相談をすることから始まります。融資希望額を伝え、不明な点があればここで確認しましょう。

申込書類は支店窓口か日本政策金融公庫のホームページからダウンロード可能です。必要書類が整ったら、郵送か窓口への持参で提出します。書類提出後、数日後に日本政策金融公庫から郵送で面談日が通知されます。面談では事業計画書の内容チェックが行われ、その内容に対していくつか質問を受けるという流れです。スムーズに答えられるように事前に準備しておくと安心です。

融資を受けるための面談であることから、人柄や社会人としてのマナーも見られます。当日は、服装や言葉遣いに気を付けることが大切です。面談が終わると、会社の事務所や店舗の実地調査が行われます。面談後、およそ1週間から2週間で郵送により通知が届きます。この通知は融資が受けられるかどうか、また受けられる場合は融資額が提示されている重要な通知です。審査の結果によっては、希望額より少ない金額で融資が決まることもあります。提示された融資額でよければ、続いて融資実行手続きです。

通知があってから数日で指定の銀行口座へ資金が入金されます。(※4)中小企業経営力強化資金による手続きには、必要書類を準備する前に認定支援機関への相談が必要になります。この制度は認定支援機関を利用することで融資の申し込みが可能となるからです。相談の結果、融資の申し込みをすることが決まったら、認定支援機関の支援を受けながら、事業計画書などの必要書類を準備します。

専門家が書類を確認して不備がなければ、日本政策金融公庫へ提出です。書類提出後は新創業融資制度と同じく、日本政策金融公庫との面談、担当者による現地調査、審査結果の通知、資金の入金という流れになります。(※5)

また、自治体による制度融資は、日本政策金融公庫の手続きとは違う流れで行われます。手続き方法は各自治体の制度よっても異なるため確認が必要です。一般的には、金融機関へ相談することから始まります。自治体の融資制度の利用は金融機関経由で行われるからです。金融機関の担当者と相談し、融資制度を利用する場合は、そのことを前提とした相談になります。申し込み書類の提出も金融機関経由です。ただし、制度によっては事前に自治体で相談をして紹介状をもらってから金融機関へ相談という流れになることもあります。自治体による制度融資の場合も、融資までに1カ月以上かかることもあるので、計画的に行うことが重要です。(※6)

無担保・無保証融資の審査では何がポイントとなるのか?

日本政策金融公庫や自治体の制度融資で無担保・無保証融資を受けるためには、いくつかの条件があります。条件を満たせない場合は、融資を受けられないこともあるのです。融資条件は制度によっても違いがありますが、日本政策金融公庫の場合は一定の自己資金が必要です。

開業に必要な資金として融資を受けるには、事業に必要となる資金のうち10%以上が自己資金であることが条件となります。ただし、条件によっては自己資金が不要となることもあります。新創業融資制度では、現在の勤務先と同じ業種で事業を始める場合、現在の勤務先に継続して6年以上勤務、あるいは現在と同じ業種の企業に通算6年以上勤務しているなどの条件を満たせれば自己資金が不要となるのです。

また、新規開業資金や女性、若者/シニア起業家支援資金の場合は、自己資金を必要としません。ただし、この制度の場合も融資額や条件によっては、担保や保証人を求められることがあります。(※7)

自治体の制度融資でも、自己資金が必要です。注意が必要な点は、個人的に住宅ローンを借りている場合、その分が差し引かれることです。自己資金には厳しい条件があります。自己資金は金額ではなく、どうやって獲得した資金なのかが問われます。本当に事業に使える資金なのか審査するためです。

例えば、一時的に借りたお金を自己資金とすることはできません。また、日本政策金融公庫の新創業融資制度は、雇用創出や経済活性化も制度を始めた目的です。そのため、雇用の創出や地域の経済活性化が見込める事業は審査に通りやすくなります。審査に通るためには、各制度で決められている条件を満たすこと、自己資金を用意すること、制度の目的に合った事業であることがポイントとなるのです。条件や自己資金の内容については制度によって違うので、事前によく確認しましょう。

必要書類を準備して申し込みをしよう!

さまざまな条件をクリアして融資が受けられる見込みがあると判断したら、必要書類を準備して申し込み手続きをしましょう。日本政策金融公庫で融資を受ける場合に必要な書類は、ホームページにも記入例とともに詳しく掲載されています。(※4)

まずは借入申込書の記入が必要です。借入申込書には申込金額や担保や保証の条件などを記入し、個人情報利用や個人信用情報機関への登録に関する同意確認があります。新たに創業する場合は、創業計画書も必要です。経営者の経歴、事業内容、現在の借り入れ状況などを記載します。創業計画書に添付する資料は、月別の収支計画を記載する月別収支計画書、取扱商品やサービスの内容を記入する企業概要書、資金繰り計画を策定するための資金繰り表などです。

中小企業経営力強化資金を申し込む場合は、事業計画書の提出も必要になります。設備投資がある場合は設備を購入する際の見積書も必要です。融資を申し込む人の本人確認書類としては、運転免許証のコピーや印鑑証明書を提出します。事業資金の流れを確認するために通帳のコピーも必要です。

また、日本政策金融公庫の融資では条件によって融資を受ける際に担保や保証人が必要になることもあります。その場合は、担保となる不動産や自己資金、保証人に関する資料の提出も必要です。自治体の制度融資を利用する場合は、金融機関を通じて書類を提出します。必要な書類は自治体によって異なります。所定の様式があるので、自治体のホームページや窓口で確認しましょう。

例えば、千葉県制度融資の創業資金の申し込みでは所定の様式で融資申込書や経歴書、勤続証明書が必要です。その他、前年度決算書や確定申告書の写し、事業税の納税証明書などの提出が求められます。飲食店や美容院など許認可が必要な業種の場合は、許認可証の写しも必要なので事前に認可を受ける必要があります。(※8)

融資を申し込む際には、あらかじめ手順や必要書類を確認し、スムーズに行えるように準備しておきましょう。

無担保・無保証融資を受ける際にかかるコスト

日本政策金融公庫で無担保・無保証融資を受ける場合にかかるコストは、事務手続きにかかるものと金利、専門家への報酬などです。新創業融資制度の事務手続きには、それほどコストがかかりません。書類の郵送にかかる費用や印鑑証明書などの公的書類を取得するための手数料程度です。

他に、融資を受ける際の送金手数料は利用者側の負担となるため、振込時に216円の手数料がかかります。中小企業事業資金では、郵便代や公的書類の取得手数料、振込手数料のほかに認定支援機関に支払う報酬が発生します。例えば、税理士事務所に依頼した場合は、融資サポート料金として着手金と成功報酬がかかるのです。さらに、融資を受ける際に最も気になるコストが金利ではないでしょうか。

中小企業事業資金の金利手数料は貸付期間や資金使途、担保の有無によって異なります。貸付期間が長くなるほど金利も上昇します。基準利率で借りた場合、5年以内であれば1.16%、最も長期となる19年から20年以内では1.45%です。新規開業資金の利率は変動型で、貸付期間や経営状況によって変わってきます。金利の目安は0.7から2.3%くらいです。(※9)

日本政策金融公庫では、シミュレーションにより事業資金の支払い利息を計算できます。借入金額や返済期間、利率を入力すると、返済金額の目安を付けられるサービスです。(※10)

最終的にどのくらいの利息を払うことになるのか、事前にシミュレーションしてみることをおすすめします。また、自治体の制度融資でも事務手続きにかかる費用は、日本政策金融公庫で融資を受ける場合とほぼ同じです。金利は自治体や制度によっても異なり、1%から2%前後が目安となります。ただし、利子の補給や信用保証料の補助があるため、実質表示されている金利より安くなることもあります。

最後に注意事項を確認!条件に合えば事業資金として申し込もう!

無担保・無保証融資は担保や保証人がいらない分、事業計画が重視される傾向があります。きちんと返済が見込めるような事業計画でなければ融資を受けられないこともあるのです。面談では経営者の事業に対する熱意や事業の将来性もポイントとなります。そのため、事業計画書はしっかりと詳細を記載する必要があるのです。

面談ではこれまでの職務経歴も重視されます。融資の条件によっては新規事業と関連のある職務経験が必要です。また、担保や保証人が不要であるため創業資金として活用しやすいという利点はありますが、必ずしも希望した融資額が満額認められるとも限らないのが実情です。そのため、希望額より少なかった場合、足りない分の資金をどうやって調達するべきか事前に考えておく必要があります。

制度のしくみを理解して経営力強化に役立てよう!

無担保・無保証融資にはさまざまな条件があるとはいえ、会社の経営力強化を考えている人などにとってはリスクが少なくメリットが多いものです。事業計画に魅力があれば、担保や保証がなくても資金が調達できるチャンスとなります。融資を受けるには雇用の創出や産業競争力強化など、制度の目的に合った事業計画であることがカギです。申し込みをする際は、日本政策金融公庫の制度や各自治体の制度融資のしくみを理解し、有効に活用できるようにしましょう。

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