有利な資金調達手段として活用できる助成金(国)とは?

中小企業の経営者や個人事業主が活用できる有利な資金調達方法の1つとして助成金の活用があげられます。助成金にはさまざまな種類があり、国や地方公共団体などが実施主体です。特に、国が実施している助成金制度は雇用関係のサポートを目的とするものが多いことが特徴です。賢く活用することができれば資金的な余裕が生まれ経営の自由度が増すでしょう。そこで、助成金(国)制度の特徴や各種助成金制度の概要についてお伝えします。

助成金(国)とは?

助成金とは、国や地方公共団体などが実施しているもので、給付金が支給される制度です。似たようなものに補助金もあります。共通点はどちらも返済不要の資金である点です。国が実施している制度については、厚生労働省管轄の制度は助成金、経済産業省が実施している制度は補助金と一般的には呼ばれています。このうち、助成金(国)は雇用関係の助成を目的としているものがほとんどです。主な財源として雇用保険料の一部が充てられています。雇用保険料は事業主と従業員で負担することになっていますが、料率は事業主の方が高いです。高く設定されている分が助成金の財源になります。

助成金の特徴は、募集要件さえ満たせば受給できることです。経済産業省が行っている補助金は、募集条件を満たしたうえで申請しても審査に通らないことがあります。複数の応募のうち制度の目的に合った良い提案だけが採用される仕組みになっているからです。制度によっては競争倍率が高くなり、なかなか審査に通らないのが実態です。一方、助成金についてはそういった競争がありませんので、資金調達のめどをつけやすいというメリットがあります。

雇用関係の助成金としては、従業員の雇用維持や転職、新規雇い入れ、雇用環境整備そしてキャリアアップなどに対する制度が用意されています。それぞれの特徴を理解して、活用できるものは積極的に活用することをおすすめします。

雇用維持を図る場合の助成金

雇用維持を図る目的の助成金は「雇用調整助成金」です。この制度は、景気変動や産業構造変化などの経済的な理由で事業活動の縮小をせざるをえない場合に活用できます。事業活動縮小時に、従業員をいきなり退職させるのではなく、しばらく休業・出向させたり教育訓練を行ったりして雇用を維持した場合に適用対象となり助成金を受給できます。受給条件は5つです。

1つ目は、雇用保険適用事業者であることです。一定の業種や従業員数が少ない場合、雇用保険は任意適用となりますが、法人については強制適用となっていますので個人事業以外は問題ありません。

2つ目は、最近3カ月の平均売上高などが前年同期比で10%以上減少していることです。事業縮小の必要性の判断基準として設けられています。

3つ目は、派遣労働者の増加率が一定以下であることです。

4つ目は、休業や教育訓練、出向などの雇用調整措置をとることが条件とされています。5つ目は、過去にこの助成金を受給している場合に一定期間以上が経過していることです。中小企業の場合の受給額は、休業・出向と教育訓練それぞれに対して設定されています。休業・出向の場合は休業手当や休業中賃金などの3分の2です。教育訓練の場合は賃金相当額などの3分の2に加えて従業員1人あたり1,200円を加算することになっています。(※2

離職者の円滑な転職環境実現のための助成金

退職せざるをえない会社員がすぐに再就職できる環境が整っていれば、離職者にとっても転職者を受け入れる会社にとってもメリットがあり経済的にもプラスです。国は転職者の受け入れに積極的な会社に対して助成金を支給することで離職者の円滑な転職の支援を行っています。

このタイプの助成金としては、まず「労働移動支援助成金(再就職支援コース)」があげられます。事業縮小などで退職者が出る場合に、退職者の転職を積極的に支援する会社が受給できる制度です。再就職支援を転職サポート会社に委託する場合の費用の一部が助成されます。転職活動のために休暇を付与する場合や退職予定者に対する再就職訓練費用なども助成対象です。(※3

また、「労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)」という制度もあります。再就職援助計画対象者などを退職後3カ月以内に正社員として採用する場合に採用者1人つき最低30万円、継続雇用することによってさらに最大100万円の助成金を受給できる制度です。(※4

これら2つ以外にも、離職者を雇い入れて行う訓練費用の助成を行う「労働移動支援助成金(人材育成支援コース)」や「労働移動支援助成金(移籍人材育成支援コース)」、中途採用枠拡大に対して助成する「労働移動支援助成金(中途採用拡大コース)」などの助成金制度が用意されています。

従業員を新規採用する場合の助成金

離職者だけでなく、さまざまな人を新たに雇い入れた場合に活用できる助成金制度も用意されています。例えば、高年齢者・障害者・母子・父子家庭などの就職困難者を採用した場合に対象となる「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」や65歳以上の高年齢者を雇い入れた場合に助成金を受給できる「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース) 、学校などの既卒者、中退者が応募可能な新卒求人・募集を行って採用する場合に適用される「特定求職者雇用開発助成金(3年以内既卒者等採用定着コース)」などです。また、 長期にわたり不安定雇用を繰り返す人を雇った場合の「特定求職者雇用開発助成金(長期不安定雇用者雇用開発コース)や雇用情勢が特に厳しい地域で事業所を設置して雇用する場合の「地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)」などもあります。(※1

このタイプの助成金で特に注目されている制度は「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」  です。主に安定就業を希望する一定の就業未経験者を試験的に雇い入れることによって助成金を受給できます。受給額は、1カ月あたり最大4万円、最長3カ月です。母子家庭や父子家庭の場合はさらに1カ月あたり1万円の加算があります。採用する従業員の対象年齢は35歳未満です。(※5

雇用環境の整備関係の助成金

転職者の採用や研修の実施に対して助成金を支給する制度だけでなく、働きやすい環境を整えることに対する助成金制度もあります。このタイプの制度は、特定の業種や年齢層に特化した助成金制度が多いことも特徴です。例えば、介護業や保育業を行っている事業者が賃金制度の整備を行った場合に助成金が受給できる「職場定着支援助成金」や、建設業の事業主が従業員に技能実習を受講させると受給できる「建設労働者確保育成助成金」などは特定業種向けの助成金制度になっています。特定の年齢層向けの雇用環境整備関連の助成金としては、高齢者雇用に関する「65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)」や「65歳超雇用推進助成金(高年齢者雇用環境整備支援コース)」などがあげられます。(※1

65歳超継続雇用促進コースは、定年を65歳以上に引き上げた場合や65歳以上の希望者全員の継続雇用制度導入を行った場合などに変更内容に応じて一定の金額が支給される制度です。高年齢者雇用環境整備支援コースは、高年齢者雇用に関する環境整備計画の作成とその計画に沿って措置を実施することで助成金を受給できます。措置としては、高齢者でも使用できる設備の導入や高齢者向け能力開発制度・労働時間制度の導入などです。(※5

ライフワークバランスのための助成金

ライフラークバランスに配慮する事業者は、働きやすい職場環境の実現に向けて制度を整備するなどした場合に受給できる助成金制度を活用できます。ライフワークバランスとは、仕事と家庭のどちらかを犠牲にするのではなく、無理なく両立することが大切だという考え方です。国は、仕事と家庭の両立をサポートする会社を支援することで働く人の環境改善につなげたいという目的でこのタイプの助成金制度を設定しています。

具体的には、事業所内に保育所を設置して運営する場合が対象の「両立支援等助成金(事業所内保育施設コース)」や男性社員に育児休業を取得させることで助成金が得られる「両立支援等助成金(出生時両立支援コース)」、育児や介護などの理由で退職した人を再雇用した場合に活用できる「 両立支援等助成金(再雇用者評価処遇コース)」などがあげられます。また、男性女性にかかわらず育児休業が所得しやすい環境を整備した事業者は「両立支援等助成金(育児休業等支援コース)」を活用できます。

休業終了時に復職する前提で休業期間中の労働力減少を補うためには代替え要員確保が欠かせません。代替え要員確保の計画を策定したうえで実際に休業明けに復職させる措置を行うことが求められます。さらに、女性が活躍しやすい職場環境整備を行ったうえで事前に設定した目標を達成した場合に助成金が支給される「両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)」もこのタイプの助成金制度の1つとされています。(※1

人勢育成・キャリアアップ関連の助成金

助成金(国)には人材育成やキャリアアップに特化したタイプの制度もあります。人材育成支援目的の助成金は「人材開発支援助成金制度」です。この制度には4つのコースが用意されています。1つ目の特定訓練コースは、労働生産性向上に関する訓練や若手対象の訓練など効果が高いとされる訓練を実施した場合に支給対象となるコースです。

2つ目は一般訓練コースで、特定コース以外の訓練を行った場合が対象です。

3つ目は、キャリア形成支援制度導入コースです。教育訓練休暇制度の導入などが支給条件とされています。

4つ目は、職業能力検定制度導入コースです。検定に合格すると奨励金を出す制度を導入したり社内検定制度を作ったりした場合に助成金を受給できます。また、キャリアップサポートを実施した中小企業などは「キャリアアップ助成金制度」を活用することが可能です。

8つのコースに分かれており、なかでも有期契約労働者を正規雇用労働者に転換する場合に対象となる正社員化コースがよく知られています。人材育成コースはパートや派遣社員などの有期契約労働者に対する職業訓練を行った場合が対象のコースです。そのほかのコースは、有期労働者の賃金アップ、健康診断制度整備、諸手当制度の導入などを行った場合を対象としています。(※1

助成金申請手続き

助成金は、条件を満たしていたとして自動的に振り込まれるものではなく、申請しなければ受給できません。そのため、助成金制度の利用を考えている経営者は、いざ申請するタイミングで戸惑ってしまうことがないよう申請手続きの概略についても理解しておく必要があります。

厚生労働省が管轄している助成金制度の申請書提出先は労働局かハローワークです。ただし、受給する助成金によって窓口が変わる可能性がありますので事前に提出先をよく確認しておきましょう。助成金の申請用紙はホームページからダウンロード可能です。申請時に提出が求められる添付資料については、もれなく添付して提出することがポイントです。

書類に不備があると連絡がきて提出を求められ受給決定までに時間がかかってしまうおそれがあります。また、受給する助成金制度によっては、申請前に準備しておくべきことの有無の確認も重要です。例えば、就業規則変更や一定の計画書作成、管理者設置などを申請前に行っておくことが条件の助成金もあります。

就業規則に関してはハローワークへの提出と従業員への周知も必要です。さらに、助成金の支給を受ける段階にも支給申請も必要になりますので忘れずに申請しましょう。労働局などでの審査後に助成金が支給されます。(※6

助成金申請や受給における注意点

助成金の申請にあたっては、事実に基づいて申請するようにしましょう。悪意を持って不正に助成金を得ようという場合でなくても、記載にミスがあればその対応に時間がとられ、受給決定までの期間が長くなってしまうデメリットがあります。また、支給申請時に事実と違う申請内容であることが発覚すると受給できなかったりペナルティが課されたりする可能性もありますので注意が必要です。

また、申請にあたっては社会保険労務士など専門家の力を借りる経営者もいるでしょう。専門家を選ぶ場合には、助成金申請に詳しい人を選ぶことがポイントです。申請経験が豊富であれば短時間でミスのない申請事務代行をしてくれます。知識があっても実務能力がなければスムーズに対応してもらえずコストばかりがかかることになってしまいますので専門家選びは慎重に行いましょう。

さらに、助成金活用を勧誘する業者にも注意が必要です。厚生労働省やハローワークは、助成金活用の勧誘には関与していません。受給額の無料査定を行うといった記載がある書類をFAXなどで一方的に送ってくるのが手口です。無料査定につられて連絡をとると強引に有料サービスへの移行を迫ってくるなどの可能性がありますので反応しないことが大切です。この件に関しては厚生労働省もホームページ上で注意喚起しています。(※1

資金調達方法の1つとして助成金を活用

中小企業の経営者や個人事業主にとって、資金調達は経営における重要な課題です。有利な条件で資金調達できれば、経営も有利に進めることができます。資金調達にはさまざまな方法があり、代表的なものは金融機関からの融資でしょう。

しかし、金融機関からの借入は担保を求められることが多く、利息の支払いも必要です。助成金を活用することで返済不要、無利子の資金を手にすることができます。また、雇用関係の助成金を活用して採用を進めることは、大切な経営資源である人材確保にもつながります。さまざまな人を採用したり賃金や休暇などの労働環境を整備したりする会社を支援する助成金(国)を積極的に活用して、有利な資金調達と優秀な人材確保の両方を実現しましょう。

関連記事

  1. 【保存版】助成金(地方公共団体)による資金調達の方法と申請手続きのポイント

  2. 【保存版】銀行・信用金庫などから資金調達をするために経営者が知っておくべき事

  3. 【保存版】銀行が扱わない案件多数!話題のソーシャルレンディングとは?

  4. 別名ノンバンクと呼ばれる貸金業者とは?活用シーンとメリット&デメリットとは

  5. 信用保証協会(各都道府県)はどういったことをしてくれるのか?

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ジャンル別ランキング

資金調達相談はコチラから

希望の資金調達手法
手法は問わない融資のみ手法も含め相談したい

担保の有無
土地や不動産などを持っている持っていないわからない

2018年7月
« 6月    
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031