中小企業基盤整備機構とは?支援制度にはどんなものがある?

公的機関は中小企業の経営支援や特定産業の育成、地域経済の振興などの政策課題を解決するために、企業の資金調達を支援する施策を講じています。中小企業基盤整備機構も、中小企業をサポートする公的機関の一つです。小規模企業共済や倒産防止共済と聞けば、自社でも利用しているというところも多いのではないでしょうか。今回は中小企業基盤整備機構の概要や、提供しているサービス、利用の方法などについて詳しく説明していきます。

中小企業基盤整備機構ってどんなところ

中小企業基盤整備機構とは、独立行政法人中小企業基盤整備機構法の定めによって平成16年7月に設立された経済産業省が所管する独立行政法人です。略称は中小機構です。事業内容は、中小企業やベンチャー企業などの事業者への助言や研修、中小企業向けの融資、小規模企業共済や中小企業倒産防止共済の運営など。
起業創業期は創業のための相談を、成長期には展示会やEコマースなどを通じた販路開拓やマッチング、海外展開支援を、そして成熟期には事業承継や事業再生など、中小企業の成長ステージに合わせた支援を日本各地で行っています。機構による経営相談だけでなく、専門家の派遣や人材育成、情報提供、資金提供も積極的に行っています。また、全国の中小企業や小規模事業者、起業に関心がある人のために学び、実践、気づきが得られるワークショップや講座、イベントなどの自己啓発の機会を設けていることも特徴です。

サービスを受けるのにお金はかかるの?

中小機構は公的な機関なので、全国の地域本部で受けられる経営相談は無料で受けられることが最大の特徴です。同機構が展開している関連施設の利用には費用がかかるものがありますが、民間のビジネススクールなどの受講と比べると非常に手頃な価格で利用できます。

直接窓口への訪問が難しいときは、メールによる相談や電話による相談もできます。中小機構が行っているのは、どの専門家につなぐのがよいか判断するプラットフォームです。そのため、初回の相談は無料ですが、専門家を派遣した場合は専門家と別途契約を結び料金が発生することもあります。
中小機構は独自の相談窓口のほか、国が設置しているよろず支援拠点との連携を行い、売上げ拡大や資金繰り、事業再生に関する経営相談、地域の支援機関と連携するワンストップサービスを展開しています。

起業創業時に利用したいサービスとは

起業・創業期に利用できるサービスには、インキュベ-ション施設とTIP*Sがあります。インキュベーションとは、英語のincubationをそのままカタカナにしたもので、卵のふ化という意味です。新しいビジネスの成長や事業化を促進するという文脈で用いられることもあり、中小機構ではそのための施設をインキュベーション施設と呼んでいます。全国32施設を運営し、オフィスや実験室、試作工場などに適した事業スペースが用意されています。
施設の利用は24時間365日可能で、セキュリティシステムも整っていることが特徴です。施設にはインキュベーションマネージャーと呼ばれる専門スタッフが常駐し、経営をサポートしてくれます。入居者の特典として、中小機構が紹介する展示会や商談会などのイベントに優遇出展枠が用意されています。
中小機構は、地域のネットワークを活用して中小企業一社では対応が難しい産学連携や事業連携、販路開拓などを支援してくれるのです。中小機構は企業にスペースを貸し出すだけでなく、共有スペースTIP*Sの運営も行っています。東京駅から徒歩3分のところにあるこのスペースでは、起業家や中小企業の経営者同士が対話できるワークショップやイベントを開催しています。過去に開催されたイベントのレポートを見てみると「社会課題をビジネスで解決する」「愛され必要とされる企業となる瞬間」「訪日外国人に忘れられない体験をプレゼントする社会を作る」など、興味深いテーマが並んでいます(※1)。

あわせて、東京でのワークショップやイベントの開催だけでなく、地方で新しい働き方や地域の魅力作りに取り組んでいる人のインタビュー内容をYouTubeやPodcastで配信も行っています。起業家や中小企業経営者が知識や体験を共有できる仕組みを提供しているといえるでしょう。
起業創業者のアイディアを形にするサポートをしてくれるのは、ビジネストです。この施設は半年程度の一定期間、起業家や中小企業経営者のステージに合わせた支援を行うためのコース制の学校です。起業に興味はあるものの、何から始めてよいか分からないという人のサポートや、地方企業の首都圏進出のための拠点提供、女性に配慮した環境が整っているのが特徴です。利用料は「創業準備コース」の場合、月4,000円で、1単位である6カ月間を超えると月2,000円がプラスになります(※2)。

新規事業の立ち上げや首都圏への販路開拓を目指している「新事業展開コース」は、1年を1単位とし、利用料は月10,000円、2年目以降は20,000円です(※3)。割安な料金で利用できる宿泊施設も整っているので、地方からの参加も十分可能となっています。大企業であれば研修の機会は多くありますが、個人事業主や中小企業経営者は経営に必要な体系的な知識やスキルを得ることは難しいものです。ビジネストのような学校は、こうした利用者のニーズを満たすサービスを提供しているといえます。

成長期に利用したいサービスとは

新事業へ挑戦したい成長期の企業は、地域資源や農商工等連携、産学連携などをサポートしてくれるJ-Net21を活用しましょう。J-Net21は、中小企業を支援するためのポータルサイトで豊富な事例を検索したり、中小事業者に関わる税金と会計、法律問題のコラム記事を読んだりすることができます。

地域資源活用事業とは、地域の中小企業者が共通して活用することができ、その地域にとって特徴的なものとして認識されているもののことです。農林水産物や工業製品だけでなく、技術や文化財、自然、温泉などの観光資源も対象です。例として、岡山県のジーンズ製造技術、北海道のタンチョウ、臨海部の魚の干物製造技術などが挙げられています。

そうした地域の産業資源を活用して、商品の開発、生産、役務の提供やマーケットの開拓などの事業を行う際に支援を受けられるというものです。農商工連携とは、「農林漁業者と商工業者などが通常の商取引関係を超えて協力し、お互いの強みを活かして売れる新商品・新サービスの開発、生産等を行い、需要の開拓を行うこと」とされています(※4)。

従来単独で行っていたことを協業することにより、売上げや利益の増加を目指す取り組みといえるでしょう。異分野の事業者や産学連携のサポートを行っているのが、新連携事業です。分野の異なる事業者が有機的に連携し、設備や技術、個人の持っている知識や技能などの経営資源を組み合わせて、新しい事業活動を行うことを目的としています。

資金調達面のサポート

新規事業の立ち上げや設備投資などを行うには資金が必要です。中小企業基盤整備機構には、起業支援ファンド、中小企業成長支援ファンド、再生ファンドというファンドがあります。ファンドは出資であるため、補助金や助成金、融資などとは異なる性質を持つものです。

補助金や助成金の資金提供者は、国や自治体、独立行政法人などで政策目的と一致していることが補助を受けるための条件となります。経営への関与はなく、返済義務はありません。一方、融資の資金提供者は銀行などの金融機関で、事業の採算性や担保、保証人の有無が調達の条件となっています。

融資は負債となり、元本と利息の支払い義務があります。ファンドの資金提供者はファンドやベンチャーキャピタルなどです。事業性や企業の将来性に対して出資を募るもので、返済義務はありません。起業創業間もない、実績が少なく担保もない中小の事業者にとっては重要な資金調達手段の1つです。ただし、事業計画策定への参画など一程度の介入があります。中小機構には、中小機構と都道府県が一体となって組成したファンドの運用益を助成金の原資とした、地域中小企業応援ファンドも存在しています。

地域コミュニティへの貢献度が高い新事業への取り組みや地域の工芸、特産品、観光資源を活用した新しい事業の開発を支援することが目的です。ファンドや助成金以外に、設備投資向けの融資も存在しています。地域の問題の解消や街の活性化を目的とする集団化、集積整備など政策性と合致していることが条件となりますが、貸付期間は20年以内で平成29年度の金利は0.45%、償還期限まで固定など非常に優遇された条件で融資を受けることができます(※5)。

また、人口30万人以上の市などで行う事業には事業所税が非課税になるなどの税制の優遇措置も用意されています。中小企業は比較的信用力が低く、融資を受けるのもハードルが高いものです。民間の金融機関から資金調達を行うことを決めている事業者に対して、中小機構は債務保証も行っています。信用保証協会の保証を受けることが困難なものが対象で、最大50億円の資金調達に対応できることが特徴です(※6)。

また、中小機構は「経営者保証に関するガイドライン」の策定も行っています。中小企業が融資を受ける際には、経営者個人の個人保証を求められるケースが多くなっています。経営者の90%近くが個人保証を提供しているといわれ、個人保証は円滑な資金調達を可能にする効果があります。

他方で、事業承継時に後継者が個人保証を躊躇したり、意欲ある挑戦者の再起を妨げるといった問題が指摘されているのです。ガイドラインの目的は、経営者保証なしで新規融資を受けることができる可能性を探ること、そして経営者保証の解除をすることです。法人と個人は本来別のものなので、社会通念上適切な範囲を超えないようにする体制を整備することを目指しています。

法人と個人とを分離する結果、保証債務を履行しなければならなくなったときでも、必要な生活費や自宅を手元に残すことができる可能性が高まります。また、引き続き経営に携わったり、再起を図ったりすることもできるのです。ガイドラインは法律ではないので法的な拘束力はありませんが、ガイドラインは合理的な判断を形にしたものであるため事実上相当考慮されるものです。

成熟期に利用したいサービス

成熟期を迎えた企業は、できるだけ早く事業承継を検討する必要があります。少子高齢化によって経営者の高齢化が進む一方、親族内に後継者がいないため、やむなく廃業という選択をする企業が増えているのです。

2006年版の中小企業白書によると、年間29万社が廃業しており、後継者が不在のため廃業した企業はそのうち7万社存在しているとされています。仕事を失う人は毎年20万人から35万人と推計されていることからも、後継者不在は大きな経済損失であるともいえるのです(※7)。

事業承継の準備には時間がかかることから、早期に対策の検討が求められています。事業承継のあり方は時代とともに変化しており、従来型の親族内承継から親族外承継も増加しています。しかし、実際は60代から80代の経営者のうち約6割が事業承継に向けて具体的な取り組みを行っていません。
中小機構では、事業承継のための相談窓口や具体的な取り組みに向けたセミナーやフォーラム、後継者育成に向けた研修を行っています。中でも中小企業大学校という関連施設で実施している10カ月にわたる後継者研修はユニークな取り組みでしょう。過去40年で800人の後継者がこの研修を受講しています(※7)。

中小機構の支援制度を利用するまでの流れ

中小企業基盤整備機構の支援制度は誰でもすぐに利用できるかというと、必ずしもそうではありません。セミナーやイベントは誰でも参加できるものもたくさんありますが、審査や認定を受けなければ、利用できないものも多くあります。

たとえば、地域資源活用や農商工連携、新連携に関する各種の制度は事業計画を作成し認定を受けてはじめて、国の補助金や政府系金融機関による低利での融資や信用保証などのバックアップを得られるという仕組みになっています。事業計画の策定方法や制度や申し込みの方法については中小機構に一度相談に行った方がよいでしょう。

また、ビジネストの創業支援コースの募集人数は8人(社)程度となっており、選考を経る必要があります。ホームページから申込書をダウンロードし、必要項目を記入したらメールか郵便でビジネストに送付しましょう。その後、面接または書類審査を経て、利用許可証、誓約書や規約などの書類が一式送付されますので、期日までに初回の2カ月分の利用料を指定口座に振り込み、施設利用説明会に参加します。説明会の際に、誓約書を提出するとビジネストの会員証が配布され、以降利用ができるようになります。

中小機構は利用しなければ損

中小機構を利用するデメリットは特にないでしょう。調べれば調べるほど中小機構のサービスは利用しなければ損だという気持ちになるものばかりです。むしろ、民間では提供できない低価格で多種多様なサービスを展開しているといえます。特に、融資に関しては民間の金融機関では絶対に真似できないような低利率です。

経営について体系的に勉強できる環境も整っています。ただし、誰でも無条件に利用できるものではなく、制度を利用するためには一定の条件をクリアすることが求められています。通常より優遇された条件でサービスを利用するのですから、当然のことかもしれません。また、相談は事前の予約が必要でなかなか予約がとれないという声もあります。公的サービスは宣伝されることもほとんどないため、知っている人だけが利用するという性質を持っています。経営上の悩みがあれば、まずは中小機構に相談してみたらよいでしょう。

 

 

 

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